幸せの前では呪いの効き目が弱い

別れた男には不幸になれと呪いを送っている。

しかし本当に不幸になられてしまっては困る。

 

大学生の間付き合っていた人がいた。

その人は最長で二年半くらい付き合っていた。

高校の同級生で好きだと言われたから付き合った。

次第に私も好きになっていくのだが。

 

その人にはいっぱい影響を与えたし、私も与えられた。

私が史上一番好きな映画は『ジョゼと虎と魚と』と言えば彼もそれが一番だと言ってくれたり。

斉藤和義の良さを話したら私よりのファンになってしまったり。

その人の家ではじめの一歩を全巻読んだり。

肉まんを食べながらアパートまで帰った冬の日だったり。

お互いの価値観を全部受け入れて全部与えてった。

 

でも大学生なんてきっとそんなもんなんだろう。

何者でもない中、自分の価値を見つけていく過程でそうやって恋人に影響与えたり与えられたり。

 

しかし私たちは次第にお互いを最優先できなくなっていく。

住んでいるところも遠く物理的な距離も離れ、心の距離も離れ。

私たちは別れる事となった。

 

 別れたあとの事はよく分からない。

同じ友達がたくさんいたはずなのに遊ばなくなっていった。

最近みないねーどうしたんろうねーって。

 

そんな中、皆とその人が4年くらい会わなくなって。

唐突に共通の友達から言われた「あいつ次の4月に結婚するらしいよ」

 

私と別れた後に手首を切るメンヘラの女に刺されたり、

家族にいろいろあったりでなんかものすごく波乱万丈的な人生を送ってたらしい。

それを人伝に聞くオレ。

なにそれ私そいつ人生の超面白い時期に立ち会えなかったじゃん。

肉まんを分け合うなんて人生において超つまんない時間じゃん。

それよりメンヘラに刺されているあいつを見たかった。

そして愛しいなって爆笑したかった。

 

その人は来年の四月にそのつらい時期を支えてくれた同僚と結婚するらしい。

はあーそりゃそりゃよござんした。

なんだあ、私より全然幸せじゃん。

そんな紆余曲折乗り越えて結ばれた彼女なんて絶対に強いつながりで結ばれてるじゃん。運命の人じゃん。

そんな人と出会えるなんてやっぱサイコーだよあんた。

そんな面白い時期乗り越えてくれた女なんて刺されたあんたを笑って支えている女に決まっているよ。

 

やっぱり不幸になっちゃえ。